肌寒い季節、温かいものが食べたいなあと思うと、日本の食卓に鍋料理が登場することが多くなる。
土鍋を囲んで、冬の野菜をたっぷり入れた鍋料理を食べる、そんな家庭の一コマを想像するだけで、温かい気持ちになれるものだ。

そこで使われる、土鍋。実は、とても優秀な調理道具なのだ。
土鍋の活躍は、鍋料理にとどまらない。
土鍋は、煮る、炊くことを得意とした調理道具である。
形状と材質から煮崩れがしにくいということから、煮崩れしやすいジャガイモなどの煮物料理にも使える。

私がおすすめするのは、土鍋で米を炊くことだ。
昔は土鍋で米を炊いていたが、忙しい現代社会においては電気炊飯器にとって代わられてしまった。
それでも、「土鍋のように炊ける」炊飯器などが人気なのは、土鍋で炊くとお米がおいしいということからだろう。
土鍋でお米を炊くと何が違うのか?
土は遠赤外線を放射するため、食材の芯からしっかりじっくり過熱して、ふっくら炊き上げるという特徴がある。しかも、保温効果にも優れているため、炊き上がった後も、ご飯を温かい状態に保ってくれるのだ。

私が使っている土鍋では、こんな風にご飯を炊く。
研いだお米に適量の水。そして、少し隙間ができるよう少しずらして蓋を閉め、中火に掛ける。15分ほどで「パチパチ」と音が聞こえてくる。これが、合図だ。強火に切り替え10秒。蓋を閉めて、火を止める。最後に、10分ほど蒸らす。できあがりだ。
ふっくらと粒の立ったご飯が炊きあがるのだ。
そして、火加減を変えると、鍋肌に当たったお米が焦げて、香ばしい「おこげ」ができる。これもまた楽しみの一つである。

電気炊飯器は、忙しい現代社会に生きる我々にとって必要不可欠な存在であるが、
たまには、その「パチパチ」というお米の音に耳を傾ける時間も味わっていただきたい。